里親制度の選択肢について

2025年10月25日

里子制度とは何か

―子どもの「家庭で育つ権利」を守る社会へ―

 

1. 里子制度の概要

里子制度とは、親の病気、虐待、経済的困難などの事情により、実の親と一緒に暮らせない子どもを、一定期間または長期的に**「里親」**が自分の家庭で育てる制度です。
この制度の目的は、「施設で育つ」ことではなく、「家庭的な環境で子どもが安心して成長できる」ことにあります。子どもにとって、愛情に満ちた家庭での経験は人格形成において非常に重要です。

日本では、児童福祉法によって定められており、各自治体の児童相談所が中心となって運営しています。


2. 里親の種類

里親と一口に言っても、目的や期間によっていくつかの種類があります。

  • 養育里親:実親の事情で一時的に養育が難しい子どもを一定期間預かる。

  • 専門里親:虐待などで心身に傷を負った子どもを専門的に養育するため、特別な研修を受けた里親。

  • 養子縁組里親:子どもと法的な親子関係を結ぶことを前提とした里親。

  • 親族里親:祖父母や叔父叔母など、親族が代わりに育てる場合。

これらの形態を通じて、子どもにとって最も適切な養育環境が選ばれます。


3. 日本の現状と課題

日本では、児童虐待やネグレクト(育児放棄)の件数が年々増加しています。2024年度の厚生労働省の統計によると、全国で約4万5千人の子どもが家庭で暮らせず、施設や里親家庭で養育されています。

しかし、そのうち約8割以上が施設での養育であり、里親制度の利用はまだ十分に広がっていません。
背景には、

  • 里親に対する社会的理解の不足

  • 子どもを預かることへの心理的・経済的な不安

  • 児童相談所の人員不足による支援体制の限界
    などがあります。


4.里親になるまでの流れ

里親を希望する場合、各自治体の児童相談所に申し込みを行い、以下のステップを経ます。

  1. 相談・申請:里親として登録を希望する旨を申し出る。

  2. 面談・家庭訪問:生活環境や家族構成、価値観などを確認。

  3. 研修受講:子どもの心理、養育の実際、法的知識などを学ぶ。

  4. 登録審査・認定:児童福祉審議会による審査を経て、里親登録。

  5. マッチング・委託:子どもの状況と家庭の条件を踏まえて、児童相談所がマッチングを行う。

登録後も、児童相談所による定期的な訪問や支援が行われます。


5.里親家庭への支援制度

国と自治体は、里親家庭が安心して養育できるように、経済的・心理的支援を行っています。

  • 里親手当・養育費:子どもの年齢に応じて支給。

  • 医療費の助成:多くの場合、子どもの医療費は公費で全額補助。

  • 専門職による支援:心理士、ソーシャルワーカーによる定期的な相談体制。

  • 研修・交流会:継続的な学びと、他の里親とのつながりを支援。

これらの制度は、子どもを育てる負担を軽減し、安定した養育環境を整えることを目的としています。


6.今後の展望

近年、国は「施設養育から家庭養育へ」という方針を明確に打ち出しています。
目標は、里親家庭やファミリーホームで育つ子どもの割合を50%以上にすること

ただし、その実現には次の課題があります。

  • 社会全体での理解と支援の拡大

  • 児童相談所や専門スタッフの増員

  • 子どもの意見や希望を尊重する仕組みづくり

  • 里親家庭の心理的負担への継続的サポート

社会全体が「他人の子どもではなく、社会の子ども」として見守る姿勢を持つことが求められています。


まとめ

里子制度は、親の事情で家庭を離れた子どもに「もう一度家庭のぬくもりを取り戻す機会」を与える制度です。
単なる「預かり」ではなく、子どもの人生に寄り添う責任ある取り組みです。

一人でも多くの子どもが安心して笑顔を取り戻せるように――。
そして、誰もが「家庭で育つ権利」を享受できる社会を目指して、制度の拡充と理解の輪を広げていくことが、私たち大人の使命です。

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